アイルランドへ行こう2:ツアーバスも面白いもの

2日目 9、Jun 2017

翌朝、ディレイの時に腹の足しにしようと買っておいたパンと紅茶で朝ご飯にした。
バスツアーの待ち合わせ時間は午前9時すぎだったので、あんまり時間に余裕がなかったのだ。アイルランドもイングランド同様、どうせ曇りか雨だろうと高をくくって分厚いカーテンを開けると、青い空がまばゆく輝いているのが目に飛び込んできた。

晴れ?!

あんなに「アイルランドに晴れはない」と天気予報を見て絶望していたのに??
予想外のことに嬉しかったが、空港で日焼け止めを買い逃したことを思い出して化粧下地をガンガン塗った。朝方はまだ寒く、風邪を引きそうな感じがしたので、なんとか重たい体にむち打って着替える。ウインドブレーカーも用意した。
初めて使ったモバイルWifiの便利さに感謝しながら、グーグルマップで待ち合わせのホテル前のバス停まで歩く。近くにいたおばあさんに一応「ここにツアーバスは停まるでしょうか?」と尋ねてみると、親切にあれこれ悩みながらも「あっ、あのツアーのバスならここで大丈夫」と太鼓判を押してくれた。

アイルランド2日目は、ダブリン近郊、自然豊かなウィックロー州にあるグレンダーロッホに行くことにした。ウィックローはあの俳優ダニエル・デイ=ルイスの家がある場所でもある。
グレンダーロッホにはキリスト教初期教会群の遺構があり、かつて「7つの教会の街」と呼ばれた場所だ。その歴史は6世紀にまでさかのぼり、欧州から多くの修行僧がこの地を訪れたという。

街を離れて小一時間ほどで辺りの景色は緑に満ちてくる。
ガイドのパトリシア(パット)の仕切りで、20人近くが乗ったバスは目的地に到着。周囲を見るといろんな国のいろんな世代の人たちが乗り込んでいる。こんな大人数は初めてだったので、やはりグレンダーロッホは人気の観光地だ。

入り口にバグパイプのひと

11時過ぎ、青い空の下で木々の間を歩くと、石造りの高い塔が見えてくる。タワーの前で説明があったが、がらんどうの小さな窓から聞こえてくる小鳥の鳴き声に思わず笑ってしまった。なんだかラピュタみたいだ。



塔のそばにはいくつか建物が残っている。屋根が失われた大聖堂跡、三角屋根が昔の趣を残すセントケヴィン教会、その周囲には古そうなハイクロスの墓がたくさん並んでいる。
「ここは神聖な場所だから、遺構や墓には敬意をはらってね」とパットが言った。





入り組んだ墓地と教会を通り抜けると、ハイキングもできる森がある。自然公園のように道は整備されていて、脇には小川や時折山菜のような植物があり、鳥の鳴き声があちこちで聞こえた。昨日は不健康のどん底だったのに、こんなのどかな朝の散歩を楽しめるなんて、なんて健康的なのだろう。木々のトンネルを進み、山の下部にあるロウワーレイク(下側の湖)まで歩いたあと、自由行動。






「上の方にも湖があります。15分くらいかかるから待ち合わせ時間に気をつけて。これでいいやという人は私とお茶でもしましょ」とパット。上の湖の方向を見てみたが、木々のトンネルの果てが見えず、時差の眠さも相まって諦めてカフェタイムにすることにした。

帰りの墓群の途中で、腕を回せたら1年以内に結婚できるというという太いハイクロスがあり、老若男女が我もと挑戦していた。
カフェオレを買ってバスへと戻ったが、パットに「ごめんなさい、熱い飲み物はバスに持ち込めないの。まだ時間は十分あるでしょ、あなたなら今飲める」と松岡修造ばりにじっと見つめられたので、バスの外で必死に飲みこんだ。

相席になったドイツ人の学生メガネ君は、試しに上の湖を見に行ったそうだが、「下と大体同じだった」と苦笑した。さらに結構距離があったせいか帰りはほぼ走ってきたらしく、半袖になっていた。

出発の時間になった。しかし、そばに座っていた香港の女性陣グループだけが帰ってこない。パットが心配して、帰ってきたほかの乗客に行き先を尋ねて、親切なメガネ君も捜索の手伝いを申し出た。
みんなの心配をよそに30分ほど経ってから、飲み物と買い物袋を抱えた香港ガールズが帰還。パットが素早くお説教をし、「次にやったら置いていきますからね、自力で帰るんですよ」とガツンとくぎを差した。

バスではメガネ君と少し話した。シャイな感じだけどいい子だった。
私が数日後に行く予定のゴールウェイにも行ってきたらしく、「写真見せてあげる」とリュックからいそいそとデジカメを取り出した。
おお、見事に…空が曇っている。

「その…晴れた日はあった?」
「…大体雨だったよ」

うん、アイルランドらしくなってきたぞ。
それから、「Free Beerと書いてあるかと思ったらBeerの字が大きく書かれただけで実はただのFree Wifiだった」という緩いだましポスターの写真を見せてくれ、私が「お腹が減ったなあ」と呟いたら、食べていたスナックを少し分けてくれたりしてありがたかった。

グレンダーロッホ周辺をバスは回り、先ほどとは打って変わって木々のない広野に出た。パットによると、昔木々を輸出?か何かのために切り出したためになくなったらしい。そのせいか風も強かった。パットはドライバーが時間の遅れを取り戻して、予定通りに次の街に着けそうだと宣言し、車内でドライバーを褒め称える拍手が起きた。
疲れていた私は風邪気味になってきて、次の街、キルケニーに向かうまでうとうととした。



■バスツアーについて
バスツアーについて説明すると、オンライン予約にはいくつかの手段がある。
まず、日本語の仲介サイトを経由すること。代表的なものはVeltraだろう。世界中の代表的な現地ツアーを網羅している。

スケジュールを立てるに当たり、現地の同じ会社のツアーと値段を比較してみたが、見たところ値段に差がなくこれは謎だった。もちろんどこかで仲介費用は発生すると思うのだが。デメリットは決まったツアーしかないため選択肢が少ないことと、Booking.com同様に直接現地と取引できないために、急の連絡がしにくいことだ。

今回は旅の後半でこのVeltraを使ってツアーを予約し、前半では直接現地のツアーバスを予約した。
ネットを見ればさまざまなツアーがある。希望地をいくつか見て、お土産屋に寄るなど経由地が余計だったり、時間がかかったりする場所を差し引いた。さらに各ツアーのレビューも目を通したが、きりがないのでこれはほどほどに。
私の選んだツアーは、自分のホテル近くの場所に待ち合わせポイントを指定できたことが一番のメリットだった。
もちろんたいていは数カ所のホテルを回ってくれるが、全てという訳にはいかない。一般のツアーで初心者にも分かりやすい待ち合わせ場所となると、ダブリンの本当の中心部が多く(そういう場所のホテルはバカ高い)、私のホテルからは30分以上もかかってしまう計算だった。地の利がないと距離感が分かりにくいので、待ち合わせ場所に行きやすいものを選ぼう。

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