アイスランド旅行記 2 (2日目:ブルーラグーン)
(一年前のことを思い出しながらつなぎかいてみます。友人Oちゃんと一緒に行った旅の記録)
15, Sep, 2011
ホテルに着いたのは真夜中だったので、その日は空港の売店でキットカットを買った以外は、夕食もろくに食べず寝るばかりだった。 翌朝うずうずと起きだして窓の外を見ると、空は見えず、白く灰色の雲が立ち込めていた。部屋はちょうどホテルの裏手に面していて、そこからはハットルグリムス教会の尖塔が見えた。
この日はアイスランドの有名なスパ、ブルーラグーンに行く予定だった。だが正直それ以外の場所についての知識は皆無だったと言っていい。 日本で旅行を思い立って、いざアイスランドについて調べたときにはガイドブックすらろくになかった。Oが買った重い参考書のような厚さのガイドを一緒に見てから、私は自分で取り寄せたロンリープラネットをスーツケースに詰め込み、ホテルで引っ張り出すと付箋をぺたぺたと貼り付けた。
ベッドに寝転がりながら読んだロンリープラネットによると、2009年の調査ではアイスランドの人口は32万人ほど。その特異な地形からか、人が住む場所は都市部やその周辺に集中しており、人口の37%は首都のレイキャビクに住んでいる。出生率は高く、長寿の国でもある。働き者の彼らは70歳で退職し、複数の職業を持っていることも少なくない(たとえば教師が夏休みにトレッキングやランニングツアーのガイドをしていることもある)。
ともあれ、近年の経済破たんの影響で、ノルウェーなど外国へ働き場所を求めて移り住む若者も増えているそうだ。
また、アイスランドは火山の国だ。 つい数年前、ヨーロッパ全土の空港を混乱に陥れたエイヤフィヤトルヨークトルの噴火は記憶に新しい。土産物屋のTシャツで、火山のイラストをバックに「we have no cash but ash」と自ら皮肉っているくらいだ(この類の皮肉の効いたTシャツがたくさんあって、しかもデザインも結構可愛いのがあるのであなどれない!)。
もちろん日本同様各地に温泉が存在し、レイキャビクのホテルの水道ですら、ひねれば硫黄のにおいがする温泉が出てきた。水はミネラルウォーターになるくらい綺麗なので、そのまま飲むことができる。さらにその自然の恩恵を利用した地熱発電でも世界に知られている。
ブルーラグーンは地熱を使った広大な温水プールで、その景観の珍しさもあってか観光客が必ず訪れるメッカとなっている。 Oと一緒にバスに乗り込んだ私は、昨日同様黒い岩の大地が広がるハイウェイ脇を眺めていた。
ひたすら続く月面のような荒野を見て、情けないが何となく不安になったのは、Oが退屈しないかということだった。せっかくここまで来たのに、そんな気分になったらどうしよう。けれどもブルーラグーンが見えてきたときに、憂鬱は吹き飛んだ。 白く凍えそうな空の下に、黒い岩場の間から蒸気に彩られた水色の水面が見えた。 バスから降りた私たちは「あれだ!!」と駆け込んで、写真を撮った。
それは不思議な光景だった。あんな水色の水をこれまで見たことがない。
興奮した勢いで急いでスパに入った私たちは、ゆったりと温いお湯に漬かって冷たい空を眺めた。 空はどこまでも広くて、顔には小雨が当たった。力を抜くと体が水に浮く。白い空と黒い地面しか見えない、そんな地平線の間でお風呂に入っていると、またたく間に疲れが抜けて行った。
温水プールの水は海水を温めており、温度は37度くらいとかなり低めだ。なめるとしょっぱいし、髪はシャンプーで必死に洗ってもごわごわになる。それでもプールの底や岩にはりついた白い泥は美容効果があるらしく、泥をためた箱がプールの脇に置いてあって、それを顔にまんべんなく塗りつけてパックすることもできる。
温いお湯の中にも、一部とても熱い場所があって、そこを抜けるたびに世界各国の人が「あちっ!!」と叫ぶのが面白かった。
プールサイドには小さな売店があり、ある集団はビールを頼んで贅沢にお湯に漬かりながら飲んでいた。私たちはチョコのかかったアイスを注文して、だらりとその風景を見物しながら食べた。
サウナも利用して、1時間半くらいは漬かっていただろうか。 プールから上がって必死に髪の毛を洗ったあとで(櫛が髪の毛に引っ掛かって取れないくらいだった)、簡単な売店がある場所でサンドイッチとカットフルーツ、そして怪しげなパッケージのジュースを買った。このジュースがひどくまずくて、Oと二人で「このパッケージだけのことはある」と噴き出した。
レストランもあるが、アイスランドは物価が高いのでなかなかランチでおいそれと手が出せない。
それでも昨夜空腹でレイキャビクにたどり着いたときとはまるで違い、幸せな気持ちに包まれていたのは、やっぱりこのブルーラグーンのおかげだ。最初は憂鬱に見えた晴れない白い空ですら、「これがアイスランドなんだ」と思えるようになってきた。
「やっぱり日本人だね私たち」
お風呂を愛する気持ちをこの場所で再確認した。
AFPのブルーラグーンの写真。 何度見てもまた行きたくなる。
15, Sep, 2011
ホテルに着いたのは真夜中だったので、その日は空港の売店でキットカットを買った以外は、夕食もろくに食べず寝るばかりだった。 翌朝うずうずと起きだして窓の外を見ると、空は見えず、白く灰色の雲が立ち込めていた。部屋はちょうどホテルの裏手に面していて、そこからはハットルグリムス教会の尖塔が見えた。
この日はアイスランドの有名なスパ、ブルーラグーンに行く予定だった。だが正直それ以外の場所についての知識は皆無だったと言っていい。 日本で旅行を思い立って、いざアイスランドについて調べたときにはガイドブックすらろくになかった。Oが買った重い参考書のような厚さのガイドを一緒に見てから、私は自分で取り寄せたロンリープラネットをスーツケースに詰め込み、ホテルで引っ張り出すと付箋をぺたぺたと貼り付けた。
ベッドに寝転がりながら読んだロンリープラネットによると、2009年の調査ではアイスランドの人口は32万人ほど。その特異な地形からか、人が住む場所は都市部やその周辺に集中しており、人口の37%は首都のレイキャビクに住んでいる。出生率は高く、長寿の国でもある。働き者の彼らは70歳で退職し、複数の職業を持っていることも少なくない(たとえば教師が夏休みにトレッキングやランニングツアーのガイドをしていることもある)。
ともあれ、近年の経済破たんの影響で、ノルウェーなど外国へ働き場所を求めて移り住む若者も増えているそうだ。
また、アイスランドは火山の国だ。 つい数年前、ヨーロッパ全土の空港を混乱に陥れたエイヤフィヤトルヨークトルの噴火は記憶に新しい。土産物屋のTシャツで、火山のイラストをバックに「we have no cash but ash」と自ら皮肉っているくらいだ(この類の皮肉の効いたTシャツがたくさんあって、しかもデザインも結構可愛いのがあるのであなどれない!)。
もちろん日本同様各地に温泉が存在し、レイキャビクのホテルの水道ですら、ひねれば硫黄のにおいがする温泉が出てきた。水はミネラルウォーターになるくらい綺麗なので、そのまま飲むことができる。さらにその自然の恩恵を利用した地熱発電でも世界に知られている。
ブルーラグーンは地熱を使った広大な温水プールで、その景観の珍しさもあってか観光客が必ず訪れるメッカとなっている。 Oと一緒にバスに乗り込んだ私は、昨日同様黒い岩の大地が広がるハイウェイ脇を眺めていた。
ひたすら続く月面のような荒野を見て、情けないが何となく不安になったのは、Oが退屈しないかということだった。せっかくここまで来たのに、そんな気分になったらどうしよう。けれどもブルーラグーンが見えてきたときに、憂鬱は吹き飛んだ。 白く凍えそうな空の下に、黒い岩場の間から蒸気に彩られた水色の水面が見えた。 バスから降りた私たちは「あれだ!!」と駆け込んで、写真を撮った。
ハイウェイ脇。雲が立ち込めて暗いせいか、朝でも自動車は常にライトをつけている。 |
それは不思議な光景だった。あんな水色の水をこれまで見たことがない。
興奮した勢いで急いでスパに入った私たちは、ゆったりと温いお湯に漬かって冷たい空を眺めた。 空はどこまでも広くて、顔には小雨が当たった。力を抜くと体が水に浮く。白い空と黒い地面しか見えない、そんな地平線の間でお風呂に入っていると、またたく間に疲れが抜けて行った。
温水プールの水は海水を温めており、温度は37度くらいとかなり低めだ。なめるとしょっぱいし、髪はシャンプーで必死に洗ってもごわごわになる。それでもプールの底や岩にはりついた白い泥は美容効果があるらしく、泥をためた箱がプールの脇に置いてあって、それを顔にまんべんなく塗りつけてパックすることもできる。
温いお湯の中にも、一部とても熱い場所があって、そこを抜けるたびに世界各国の人が「あちっ!!」と叫ぶのが面白かった。
プールサイドには小さな売店があり、ある集団はビールを頼んで贅沢にお湯に漬かりながら飲んでいた。私たちはチョコのかかったアイスを注文して、だらりとその風景を見物しながら食べた。
サウナも利用して、1時間半くらいは漬かっていただろうか。 プールから上がって必死に髪の毛を洗ったあとで(櫛が髪の毛に引っ掛かって取れないくらいだった)、簡単な売店がある場所でサンドイッチとカットフルーツ、そして怪しげなパッケージのジュースを買った。このジュースがひどくまずくて、Oと二人で「このパッケージだけのことはある」と噴き出した。
たぶんビタミン系の飲料。ジュースは100%をお薦めしたい。 |
「やっぱり日本人だね私たち」
お風呂を愛する気持ちをこの場所で再確認した。
AFPのブルーラグーンの写真。 何度見てもまた行きたくなる。
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